青山のワタリウム美術館で開催されている
「ルイス・バラガン邸をたずねる」では
バラガンの書斎が再現されていた。
さまざまな本に交じってあったのが「木村伊兵衛」の写真集。
木村伊兵衛の写真展は1年に一度、あるいは2年に一度は
都内のどこかで開催されていて、
今回はいいかなと思っても、最終的にはいつも足を伸ばしてしまう。
今回もバラガン展で本の帯を見て、
あぁ、やっぱり、恵比寿に行かなくちゃ、と思って
恵比寿の東京都写真美術館に行ってきた。
まず冒頭に展示されていた、
木村伊兵衛によるアンリ・カルティエ=ブレッソン、
アンリ・カルティエ=ブレッソンによる木村伊兵衛、
お互いを撮影しあった写真がほほえましかった。
この2枚を見ただけで、あぁやっぱり来てよかった、と思う。
木村伊兵衛による横山大観、上村松園、鏑木清方、谷崎潤一郎、
久保田万太郎、永井荷風など、芸術家たちのポートレイトがとてもよかった。
土門拳が撮影した芸術家たちの写真も好きだけれど
木村伊兵衛の写真は、少しふんわりとして、
それでいてシャープで、かつ透き通っているような感じがする。
上村松園の写真は、明治女の凛とした姿のものが多いけれど
彼が撮影すると、ただの絵を描くのが好きな女の子のような雰囲気になる。
サントリー美術館の鏑木清方展に清方の写真が少しあったけれど、
木村伊兵衛が「肖像写真」として撮影するとこんなにも違うのか、とちょっと驚く。
谷崎潤一郎の写真もよかったなぁ。
印刷物で見ていたのとは雰囲気が全然違う。
年こそ取っているけれど、イケメンじゃん!と
改めて認識した(遅い・・・ですね)。
レンズを通して真っ直ぐにこちらを見つめる谷崎の表情は
知的で、繊細で、男の色気があって、
彼の作品や生き方を思い出し、
ふーむ、なるほど、と・・・。
1枚の写真は雄弁だなぁと改めて実感した。
ところで有名な「おばこ、大曲」、
何度も見ていてつい通り過ぎてしまうところだったのだが
(女性の瞳が黒ではなく、薄いグレーなのがいいんですよね)
あぁ〜知らなかった。今まで、ずーーーーーっと、
「農作業」のひとときを写したものかと思っていたのだけれど
「おでかけ」のワンショットだった・・・のかも・・・。
撮影時の1957年の大曲では、笠を被り、外出していたんだろうか。
ずっと長いこと思い込んでいたので自分でも信じがたいけれど
きちんと出している白い半襟もおでかけっぽい・・・。
ふー。びっくり。この写真のベタ焼き、見てみたいなぁ。
アンリ・カルティエ=ブレッソンの展示も
最後の方に肖像写真がちらっと並ぶ。
ジャン・ポール・サルトル、アルベルト・ジャコメッティ、
アンリ・マティス、ジョルジュ・ルオー、ピエール・ボナール、
ジョリオ・キュリー夫妻、ジャン・ジュネ、
ココ・シャネル、アンドレ・マルロー、
トルーマン・カポーティ、アルフレッド・スティーグリッツなど。
何度見ても、ついじっくり見てしまう。
木村伊兵衛を被写体にした写真もそうだけれど
人物だけの「大首絵」ではなく、背景に様々な“情報”を入れて
小物を利かせるのが絶妙に巧い。
料理の写真を、アップでリアルに見せるのではなく、
ちらっと緑の葉や、洒落たフォークや、テーブルナプキンなどを添え
料理が存在している空気を大切にしたような、そんな雰囲気・・・。
会場は若い人たちで混み合っていて
なんだかちょっとうれしかった。
●東京都写真美術館「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン」
2月7日まで

