「クライン・ブルー」(インターナショナル・クライン・ブルー)を
初めて知った。
高校になって歌川広重の「ヒロシゲ・ブルー」を知り、
「クライン・ブルー」の真似かと思ったら、
美術の先生が眼鏡をずり落とさんばかりに大笑いして
「まったくお前はおもしろいな」といって私の頭をクシャクシャにした。
「先生、笑い過ぎ!」「しかも、髪形乱れるし!」と思いつつ
先生の大きな手の感触がなぜかしばらく残っていた。
もう遙か昔のことだけれど、そんな制服を着ていた頃の光景を思い出し、
思わず苦笑する。そして、懐かしさでいっぱいになる。
「江戸の四季 広重・名所江戸百景」を見て、
その美術の先生が
広重は「東海道五十三次」よりも「名所江戸百景」の方が好きだ、
といっていたことを、ふいに思い出した。
館内はまさに「ヒロシゲ・ブルー」の世界。
「空と水」が独特のブルーで彩られ、
江戸は広い「空」と、豊かな「水」に満ちていたのだなぁと実感する。
そしてその空の先には、富士山が見えたりする。
実際に見たことも、行ったこともない未知の世界なのだけれど
1枚1枚の絵に、すんなりと入っていけてしまう。
そんな不思議な感覚が、外国人にも共有しやすく、
美人画とはまた違った意味で、
浮世絵を受け入れやすいツボとなっているのかもしれない。
単に「風景画」かと思っていたら、大間違いだった。
梅が描かれていると思っていた「亀戸梅屋舗」の背景は
梅を見物する人たちで賑わっている。
同じく、菖蒲が美しいと思っていた「堀切の花菖蒲」は、
菖蒲を愛でる人たちが、花の間に見え隠れしている。
桜の風景には、花見をする人たち、
花火の風景には、花火見物をする人たちが存在し、
人々の生活が決して声高ではなく、静かに“普通に”描かれている。
まだ写真が普及していない時代、江戸の人たちが浮世絵に
写真のような楽しさを感じたであろうことが容易に想像できた。
改めて驚いたのが夜の風景。
月夜は明るく、闇夜の空には星が断然、多い。
浮世絵の中にいる人たちにとって、
私は確かに未来を生きている、と妙なところで実感した。
●ニューオータニ美術館
「江戸の四季 広重・名所江戸百景」
前期 5月27日(日)まで。
後期 5月30日(水)〜7月1日(日)まで。
※前期・後期で「名所江戸百景」全120図が展示される。

